ブリキのロボットは笑わない
ぼんやり、店番をしながら今日の出来事を思い返してみる。
今日はおばあちゃんのかわりに、駄菓子屋の店番だ。学校が終わって、おばあちゃんが買い物に行っている間だけ。
学校からおばあちゃん家は近いし、そんな長い時間じゃない。それに小学生がちらほら来るだけだから楽でいい。
『ノート、持っていくの手伝うよ』
先生に頼まれたノートを職員室へ運ぶ途中、クラスメイトに声をかけられた。
せっかく優しくしてもらったのに、申し訳なかった。
『別にこれくらい大丈夫だから』
びっくりしたせいで断ってしまった。重かったから、誰か手伝ってほしいなって思ってたのに。
女の子だったらもうちょっと平気だったと思うけど、なにせ男子だったから。
女子とだってどうしたらいいか困ってるのに、男子なんてハードルが高いよ。
「嫌な感じに思われたかな……」
棚に飾ってあるブリキのロボットを見つめながら呟いた。
笑わない、仲間だ。なんてね。
両手で自分の頬にさわって、伸ばしてみる。
あたしはブリキみたいにかたくないんだけど、なにがいけないのかな……。