ブリキのロボットは笑わない
エプロンのポケットに100円を入れて、もうひとりが決まるのを待つ。
「うーん、あとこれ1個ほしいんだけど……」
「じゃあ、そっちやめたらよくね?」
「今日これも食べたい気分」
「がんばって悩め」
売り場から離れて、置いてある椅子に座る男の子。やっぱ、今日も長くなりそうだなあ。
いっつも10分以上は悩むもんね。
──カランカラン。
再び、ドアが開く音が聞こえた。
「いらっしゃいませー……えっ?」
制服が、あたしと同じでびっくりした。相変わらず、表情は変わってないだろうけど。
今日、ノート運びを手伝ってくれようとしたのに、断ってしまったクラスメイトだ。
……なんで、こんなとこに?
「あ、武内さん」
「どうも……」
「ここ、家なの?」
「違います……」
ふぅん、と興味のなさそうな返事をされた。なんで来たんだろう。
駄菓子屋って、高校生が来る場所とはちがうよね。高校生って、ファミレスとかショッピングモールとか、そういうところにいるイメージだもん。
「ねーちゃん! 決まらない!」
「……え、あ、もう。じゃあ、1回あたしも計算してみるから見せて」
いったん椎名(しいな)くんから目をそらして、男の子が持っている駄菓子を計算していく。
……あー、あとたった10円くらいおまけしてあげたい。