ブリキのロボットは笑わない
「あと10円足りてないね」
「おまけしてよ。お願い!」
そうしてあげたいのは山々だけど、それをやっちゃったらよくないよね。
他の子にしゃべられたら、その子にもおまけしてあげなきゃいけないし。まず、一緒に来てる子にしないって不公平だ。
うーん、まだ悩んでもらうしかないかな。
「武内さん、はい10円」
「え……いや、あの」
「いいって。今日だけだし。友達待たせてかわいそうだろ。早くしてやれよ」
後半の言葉は、男の子に向けられたものらしい。あたしは差し出された10円を受け取っていいものかと困ったけど、有無を言わさず押し付けられた。
結構椎名くんって強引な人だ……。
「わー、にーちゃん! ありがとう。あと100円! 明日はちゃんと決めるから! よっしゃー、遊ぶぞ!」
「今日早かったじゃん。ねーちゃんまたね!」
さっきまで悩んでいた男の子も、その友達も大喜びで、去っていった。
急に静かになって、なんだか気まずい。
今日のこと、ちゃんと謝ったほうがいいかな……。
「あの、椎名くん」
「なに」
「今日、ノート運びを手伝ってくれようとしたのに断ってごめん。ありがたかったけど、びっくりして断っちゃって……」
申し訳なさそうな顔をすることができそうになかったので、頭を下げた。
せめて、嫌な感じにとられないといいな。
「あれ、びっくりしてたんだ?」
顔を上げると、椎名くんは笑っていた。