ブリキのロボットは笑わない
「苺がいいって」
「あるよー。この、ピンクのが苺味。妹さんに買ってくとか?」
棚にある袋から、ピンクのねりあめを取り出す。
苺を選ぶって、なんとなく男の子のイメージじゃないなと思ったから。弟じゃなくて、妹かなって。
「自分で買いに行けって言ったんだけど。ちょうど駄菓子屋高校の近くにあったなって思い出したから。まあ、仕方なく」
「そっか。いくつにする? ひとつで大丈夫?」
「うん、ひとつで。でも、ほかにも買うよ。武内さん、なんかいいのある?」
そう来るとは思っていなくて、言葉に詰まる。なんかいいのってなんだ。
店番をすることはよくあっても、あたしも駄菓子は最近あんまり食べない。
「……えっと、さくら大根とか?」
「いいね。母親が喜びそうだから、それも」
あたしよりも取るのが早かった椎名くんから、さくら大根を受け取る。
妙な緊張感があるけど、表情に出ないからよかったのかもしれない。