こんなもの拾いました。
「むりー!むーりー!雨にずぶ濡れのままおねーさんはほっとくの?」

「傘貸したらあたし濡れる」

「じゃあ途中まで一緒に帰ろっか」

「なんで?」

「入れてくんなきゃこのまま野垂れ死んじゃうよ。いいの?」

「傘を貸さない、それだけで野垂れ死ぬことはないと思う。さようなら」

「いやだー!連れて帰ってー!」

「うるさい!近所迷惑でしょうが!」

そう言うと、わざとさらに大声で喚きだした。



「わかった!わかったから!」

「はいかーえーろっ。」

すぐさま静かになった彼は、私から傘をとり、

「相合傘ー」

なんて言いながらにっこり笑う。
私の手から傘を取り上げたあの時、彼の手に若干触れた。
雨のせいもあり湿っていたが、それ以上に手の冷たさに驚いた。

いつからあの場所にいたのだろう…。


「ほらー、帰るよー」

さらに隣に並ぶと、見た目はもさいのに何故かいいにおいがした。
お母さんの使っている柔軟剤に感謝しろ!!と脳内でぶちキレながら足を進めた。
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