こんなもの拾いました。
「おい、貴様」

「お風呂借りるねん」

あたしの言葉を無視し、彼は浴室へ消えて行った。
まるで、自分の家の様に。
え?嘘でしょ?

ってか彼とまだ自己紹介すらしてない自分、社会人としてどうなんだ。
てか、何であたしが、社会人としてのモラルを問われなければいけないんだ!!

怒りに任せてお風呂のドアを開けると、

「やだーえっち!」

と言いながら湯舟に使ってこっちを笑って見ているあいつがいた。


「やっぱりさ、雨にうたれてたから体が冷えてたのか、最高に気持ちいいねー」
「……」
「この、入浴剤いい匂いだね。シャンプー借りるね」
「……」
「なに?のぞきが趣味なの?」
「お前…10分以内にお風呂からあがれ。常識というものを再教育してやる」

それだけを言って乱暴にドアを閉めた。


「いやーいいお湯でしたっ!」

まあ、思ってたけどね!10分じゃ上がってこないって!
気づいてたけどね!常識がない事ぐらい!


待て待て待て。奴の声を背中に浴びながら考える。


お風呂借りる。服は雨でびしょぬれ。お風呂上りにそれを着るとは考えられな。
という事は、着替えなし。着替えがなければすっぽんぽん。
すっぽんぽん。すっぽんぽん!?…え!?全裸!?


急いで部屋を探し、とりあえず山本がハワイで買ってきたニューヨークと書かれたTシャツと短パンを用意。
下着は濡れてないだろうから、まあいいか。
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