ほしいもの
「ねぇ、リクさんも来ない?
今度うちの店、2号店を出すから、パーティーするの。
サキを連れてきてよ、こいつアテにならないかたら。」

クスクス笑いながらユリナさんが私のところへ来て、
腕を組んでくる。
パーマ液の匂いが軽く鼻をつく。
ユリナさんは美容師をしている。
若くして店を抱える、とても仕事っぷりのいい女性だ。

「パーティーですか?いいですね。」

実際はパーティーなんて苦手だけれど、
最近は何もおもしろいことがないし、
それに私はユリナさんが好きだった。
晴れたようにいつも笑顔で、
すごく気持ちのいい人だ。

「おいリク、嘘つくなよ。
絶対に嫌いだろ、パーティーとか。」

ユリナさんとは反対側の私の腕を
サキさんが拗ねるように抱く。
何だこの状態は。

「パーティーは好きじゃないですけど、
ユリナさんは好きなんで。」

私がそう言うと、サキさんは「浮気者!」と泣き真似をした。

本当に、子どもだ。
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