ほしいもの
「リク、パーティーのために店内から
俺の服、見立ててよ。」
「アルバイトにそんなことできません。」
「…だから、就活やめてここで働いてくれたらいいんだって。」

ユリナさんが帰ってから、しばらくは来客がなく、
サキさんと私は2人で店内の服や雑貨を
ああでもないこうでもないと言いながら
片付けていた。

それすらも持て余していたところ、
サキさんは突然そう言った。
私は急に話が真面目なトーンになったことを敏感に察知し、
考えた。

成り行きで、働かないか、と誘われてから、
店にはバイトで入り、就活は続けた。
事務の仕事で内定が出てからも、バイトを続けた。
春に入社するまで、という期間限定で。
別にこの店での仕事が嫌とか、
将来性云々とか、そういうことではなかった。
何となく、そうじゃない、と思ったのだ。

「リクさぁ、」

サキさんが私の名前を読んだ時、
店の電話が鳴り始めた。
サキさんが、なんだよ、とつぶやいて
電話を取りに向かう。
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