イジワル同期とスイートライフ
すっかり興奮し、見せて見せて、と薬指に輝く指輪に食いついてしまう。

プラチナの台座にダイヤモンドが埋まった、古典的でシンプルなデザインだ。

うわあ、素敵だなあ、やっぱりこういうのは王道に限る。



「お相手、どんな方なんですか」

「3つ上で、社内なんですよ。私、今までの人生、男運最悪だったんで、ありがたいばっかりで、もう奇跡だと思ってます」



久住くんは完全にブラック認定なのね…。

一方、"最悪"に数えられた当人は、言葉を失って呆然としている。

そうだよねえ、現状はどうあれ、元カノの結婚は、衝撃だよね。



「式は?」

「まだこれから計画するところで」



教会式? 神前? とガールズトークで盛り上がる中、久住くんがなにも言わないので、肘で小突いた。



「いてっ、なんだよ」

「お祝いの言葉とか」

「あ、そうか、おめでとう」



皮肉でもなんでもない、純粋な言葉をもらって、花香さんがきょとんとする。

その様子を見て、久住くんがふっと笑った。



「幸せにな」

「あ…ありがと」



花香さんは落ち着かなげに、こぼれやすいさらさらの髪を何度も耳にかけて、真っ赤になってしまう。



「お前を嫁にするなんて、できた人もいたもんだなあ」

「ほんとだよね、やっぱりこれまでの男とは器が違うっていうか」

「おい」



いつもの流れになったところで、花香さんがふふんと笑んだ。

久住くんの鼻先に人差し指を突きつけて、高らかに言う。



「六条さんに捨てられても、私の幸せ、邪魔しに来んなよ!」

「頭沸いてんだな、気の毒に」

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