イジワル同期とスイートライフ
「運動不足でしょ」

「忙しくて…」



肩甲骨まわりに取りかかると、久住くんが満足そうに呻いた。



「六条、金取れるよこれ」

「実際これで長年、お父さんからお小遣いもらってたの」

「いくら?」

「10分500円」

「今度メシおごるわ」

「何分コースにします?」

「寝るまでやって」

「5分で落としてあげる」

「おー、いいね、エロい」



言いながら後ろ手で私の腿をさわってきたので、脇腹をくすぐってやった。



「うわ!」



活きのいいエビみたいに跳ね起きた久住くんが、仕返しに手を伸ばしてくる。

脇をガードしつつ、向こうの弱いお腹周りを狙って、同じように首筋を狙われて、最後にはくんずほぐれつのもみ合いになった。


ぐちゃぐちゃになった布団にまみれてキスをした。

久住くんは楽しそうに笑っていて、そのことで私は勝手に、突き放されているような気分になる。

こんなにさみしいのは私だけか、畜生。

シャワー上がりの湿った髪を、腹立ちに任せてぐしゃぐしゃとかき混ぜてやると、身体ごと飛びかかるみたいな手荒なキスをされ、歯がガチンと鳴った。



「痛い!」

「お前が悪い」



私の顔を両手で挟んで、今度は柔らかい、深いキス。

親しげに舌を絡めてくるのに、やっぱりその夜、彼が私を抱くことはなかった。


腕の中で寝たふりをしながら、涙が出そうになった。

身体だけなのが嫌で、つきあうとか無茶を言い出したくせに。

結局身体だって、途中で飽きちゃうんじゃない。


じゃあこの次には、なにが待っているのかなんて、怖くて考えられないよ。

どこまで人を振り回せば気が済むの。

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