イジワル同期とスイートライフ
えっ。

なんの話。



「主張って」

「さっきの、同じ部だろ? もの頼むのに、そこのきみってことねえだろ、名前くらい呼んでもらえよ」

「でも…たぶん、私の名前を知らないんだと思う」

「だから、それがおかしいんだっつってんの」



え、ちょっと待って。

久住くんの見せる不快の感情に、私、完全に置いていかれている。



「私のやり方の話?」

「それもあるんじゃねえの。お前、ほぼメインで動いてんじゃん、だったらもっと前に出てってもいいだろ」

「裏方なんだって」

「そういうこと言ってんじゃなくてさ…」



久住くんがいらいらと髪をかき上げる。

私は、どうして責められているのかわからず、委縮した。



「特約店会議っていったら、営業部全体に関係する大イベントだろ、それを仕切ってんだろ?」

「それは、そうだけど…」

「悔しくねえのかって話だよ、あんな、小間使いみたいな扱いされて!」



ショックが身体を駆け抜けた。

プライドがない、と言われた気がしたからだ。

いや、実際言われたんだ。


言葉が出なくなった私に、久住くんが気づいた。

はっとその目が見開かれて、後悔の色が表れる。



「悪い、俺…」

「ううん、あの…私、急ぐから、これで」



彼のほうを見ずに、階段を駆け下りた。



「六条!」



頭上から聞こえる声は、必死で無視した。

心臓がドキドキと鳴っていた。

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