イジワル同期とスイートライフ
「そんな場で、日本語で喋るのはもったいない。本部長は役員でもあります。不慣れなのは承知の上ですが、国内、海外双方へのアピールとして、取引の公用語で語りかけるのは、有効です」



公正で、視野が広くて、無駄なく冷静な発言だ。

久住くんの言葉でなければ、海外企画の意見として受け止められたのに。

今の私には、なにを言われても自分への糾弾に聞こえる。


怒らせるのが嫌で、やるべきことから逃げるんだな?

そう言われている気がする。



「六条さん、どうだろう、イベント的には入るかな」

「スケジュールとしては、大丈夫です、調整が必要ですが」

「僕は挑戦したいと思ってる、どう?」



時田課長が、まっすぐな目を向けてきた。

実現したら素晴らしい前例になると思います、もちろん。

…でも。



「…いいと、思います。諸方調整します」

「本部長への提案は、国内企画さんからしていただけますか」



久住くんの声に、そちらを見た。

えっ。



「そのほうが聞き入れていただける可能性が高い。我々も同席はしますが」



どうしてか久住くんは、課長でも幸枝さんでもなく、私を見て言った。

そんな、これじゃあ…。



「おっしゃるとおりだと思います。六条さん、説明の日程を組もう」

「はい…」



私がやる、のか。

当然だ、担当なんだから。

私が全部やって、当然だ。


非難だって罵倒だって、私が受け止めて当然なんだ。


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