イジワル同期とスイートライフ
心が震えて、口から出そうだ。

手のひらから、熱と一緒に全部、伝わってしまいそうで怖い。


久住くん、私、あなたが好きなんだよ。



玄関の壁に押しつけられたとたん、唇が重なった。

手は駅からずっと繋いだままで、もうどっちの体温かわからないくらい熱い。

壁に置いた片手で、私をゆるく拘束して、久住くんは長いキスをした。


泊まりたいと言った、私の欲求を感じ取ったに違いない。

もつれるように部屋に上がり、ベッドに倒れ込む。


見上げる先で、久住くんがネクタイを首から抜き取った。

上着を脱ぎ捨てて、ワイシャツから腕を抜きながら、私にキスをする。

身体を起こして、ひと息にTシャツを脱ぐと、すっきりしたように頭を振り、その仕草が私には、高校生とかそのくらいの男の子みたいに見えた。


綺麗な上半身が、こちらに倒れてくる。

受け止めながら、なにかおかしいと頭のどこかが感じていた。

これでいいんだっけ。


首筋へのキスと同時に、ブラウスのボタンに指がかかる。

上のほうを最低限外しただけで、久住くんは手を差し入れてきた。

残りを私が自分で外すと、待ってましたとばかりに下着ごと肩からずり下ろされ、むき出しになった肌に甘く歯を立てられる。


次第に息が上がってくる。

腕の内側を舌が這ったとき、こらえきれずに最初の声をもらした。


でもやっぱり、なんだろう、なにか違う。

強烈な違和感。

このまま続けたらダメだ。

ダメだ。



「や…ごめん、やめて、やめて!」



私がいきなり叫んだので、久住くんはぎょっとして身体を起こした。

電気もつけない薄暗い部屋の中、ベッドに手をついて私を見下ろす。



「え、なに? どうした?」



そのときようやく私は、それまで彼がひとことも発しなかったことに気がついた。

自分がストップをかけたというこの事態に動揺して、声が震える。

< 122 / 205 >

この作品をシェア

pagetop