イジワル同期とスイートライフ
いきなり大きな声を出した私に、彼は驚いたようだった。

少しの間、口をつぐんで、探るような目つきをする。



「なんで」

「なんでって」



なんでなんて、こっちが訊きたいよ。


私たち、なんでこんな関係、始めたんだっけ。

なんで私、こんな不安になりながら、続けているの。

なんで久住くんは、こんなことが平気なの。

私のこと、なんだと思っているの。


もう無理だ。

なにもかも無理、限界だ。



「やめる、もう」



毅然と言ってやりたかったはずの言葉は、震えた。

久住くんが、訝しげに眉をひそめる。



「終わらせる、こんなのおかしい」



久住くんこそ、最初に言ったよね。

私がバカでもめんどくさそうでもないから、こんなこと始めたんでしょ。

要するに、手頃だったからでしょ、いろいろと。



「私、バカだしめんどくさいよ、そういう相手はいらないんでしょ。大前提が崩れたんだから、もうこんなのおしまい。そうだよね」



嫌いじゃない、は、好きでもない。

好きでもないのに一緒にいるには、お互いの熱量のバランスが大事で、一方が好きになったら、終わり。

どんなにごまかしたところで、もう無理だってことだ。



「自分の口で言えって、言ったよね」



言ったよ。

涙をこらえているような声が、悔しくてならない。

黙って聞いていた久住くんは、表情も変えずに尋ね返してきた。



「で、終わり?」

「そう、もう終わり」

「違う、言いたいことはそれで全部かって訊いてんの」

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