イジワル同期とスイートライフ
えっ…。



「とりあえずわかったよ、お前はそもそも俺の思ってたようなのとは違うわけだから、リセットだってんだろ」

「…そう、だけど」

「で、お前の話は?」



えっ、と間抜けにもぽかんとした。

久住くんが、まっすぐに私を見て再度訊く。



「ないわけ?」



私の話って。

戸惑う私に、あきれたように笑った。



「そんなんじゃ、却下だな」

「却下って」

「前提なんて、どこも崩れてねーよ。俺は別に、今でもお前をバカともめんどくさいとも思ってない。リセットには応じない。残念だったな」

「そんな」

「俺を納得させたいんなら、俺の話じゃなくて、お前のこと聞かせろ」



一歩、彼が動いた。

そのまま、ふたりの間の距離を、ゆっくりと詰めてくる。

私は無意識のうちに後ずさり、でも彼のほうが速かった。

気づいたときには目の前にいた。



「お前がどうしたいのかだよ。妙な理屈並べてないで、それだけ言えよ」



身長の差の分、見下ろされる。

試すような瞳が、冷たく光る。



「たとえば、二度と俺には抱かれたくない、とかな」



思わず目を見開いて、眼前の男を凝視した。

どんなつもりで、それ言っているの。

私に言えるものかって、足元見ているの?


言ってやろうと思った。

けれど、やっとわずかに開いた口からはなんの言葉も出てこない。

久住くんは薄く笑った余裕の表情で、私がなにか言いだすのを、楽しみに待ち受けているような様子さえ見せた。

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