イジワル同期とスイートライフ
…ほら。

こういう流れで、どうやったら「実は私、相手が」なんて言えるの。

やれるもんなら、お手本見せてよ。

自意識過剰と思われるか、向こうに気まずい思いをさせるかの、どちらかだ。


それでもこれは、言わせた私が悪いの?

私がこれを期待していたってことになるの?

久住くんはそう受け取るの?



【WDMももう少しですね、弊社スタッフも全力で行きます】



間髪入れず、須加さんがそう送ってきてくれた。

見てよ、優しい。

久住くんよりずっと優しい。

言葉にしてくれるし、追い詰めずにいてくれるし、私が悪いなんて、たとえ思っていたとしても、出さずにいてくれる。


抱えた膝に、涙が落ちた。

なのに、どうして私は、久住くんしか好きじゃないんだろう。


 * * *


「各部門のプレゼンも、英語で挑戦したいって連絡が続々だよ」

「本当ですか」

「まあ、本部長がやるとなったら、自分だけ楽して日本語喋ってるわけにいかないもんね、これもさ、実は海外企画の狙いだったんじゃないかな」



なるほど、そこまでは考えなかった。

本部長によるスピーチの話は、思わぬところにまで余波を及ぼしている。

幸枝さんとの会話に、デスクの島の端から、時田さんも参加した。



「あの久住くんて子は、いいね」

「出たー、時田さん、ああいう子好きそう」

「大好きだね、あの不敵さ!」



腕を組んで、語りたくて仕方ないみたいに身を乗り出す。



「正論であることを盾に取って、無礼ぎりぎりのところで主張をぶつけてくる、思い出すだけでぞくぞく来ちゃうよもう」



変態、と幸枝さんが小声でつぶやいた。



「六条さんの同期なんだって?」

「そうです」

「宣伝の吾川くんもですよ」

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