イジワル同期とスイートライフ
この姿勢が、彼女をチームのトップにのし上げたんだろう。
カスタマー部門の部長がたどたどしい英語をしゃべっているかたわらで、邪魔をしないよう隅のほうのテーブルで差し入れを開けた。
「このプリンは個数がないので、女の子用で。隠しときましょう、エヘ」
いかにも限定品らしいガラス瓶に入ったプリンを、いそいそと足元に置く。
焼き菓子やシュークリームなどを、取りやすいよう並べているうちにスピーチが終わった。
見守っていた関係者たちからねぎらいの拍手が起こる中、原稿のプリントアウトを持った久住くんがステージに近づくのが見える。
床高90センチの壇上にひょいと飛び乗ると、しきりに汗を拭いているプレゼンターと話しはじめた。
「いや、いいですよ、そこはお気になさらず、非常に聞き取りやすかったです」
「そりゃよかった、にしても、どこを読んでるのか、わからなくなるね…」
「そうじゃないかなと拝見していて思いました。原稿を調整しましょう、六条!」
「はい!」
「2台のプロンプタの距離を、もう少し離してほしい。今の状態だと目線が固定されすぎて、"読んでる"のが丸わかりなんだ」
駆け寄った私に、ホールの後ろの壁に設置してあるプロンプタを指して言う。
設営の話とわかるや、須加さんも来てくれた。
図面を見ながら彼に確認する。
「今からできますか?」
「なんでもやりますよ、どのくらいでしょう、久住さん?」
「そうだな、あのカーテンフックの、2…3個分くらい」
「少しだけお時間ください」
シーバーでスタッフに指示を飛ばしながら、プロンプタのほうへ走っていく。
久住くんがしゃがみ込んで、私に原稿を見せた。
カスタマー部門の部長がたどたどしい英語をしゃべっているかたわらで、邪魔をしないよう隅のほうのテーブルで差し入れを開けた。
「このプリンは個数がないので、女の子用で。隠しときましょう、エヘ」
いかにも限定品らしいガラス瓶に入ったプリンを、いそいそと足元に置く。
焼き菓子やシュークリームなどを、取りやすいよう並べているうちにスピーチが終わった。
見守っていた関係者たちからねぎらいの拍手が起こる中、原稿のプリントアウトを持った久住くんがステージに近づくのが見える。
床高90センチの壇上にひょいと飛び乗ると、しきりに汗を拭いているプレゼンターと話しはじめた。
「いや、いいですよ、そこはお気になさらず、非常に聞き取りやすかったです」
「そりゃよかった、にしても、どこを読んでるのか、わからなくなるね…」
「そうじゃないかなと拝見していて思いました。原稿を調整しましょう、六条!」
「はい!」
「2台のプロンプタの距離を、もう少し離してほしい。今の状態だと目線が固定されすぎて、"読んでる"のが丸わかりなんだ」
駆け寄った私に、ホールの後ろの壁に設置してあるプロンプタを指して言う。
設営の話とわかるや、須加さんも来てくれた。
図面を見ながら彼に確認する。
「今からできますか?」
「なんでもやりますよ、どのくらいでしょう、久住さん?」
「そうだな、あのカーテンフックの、2…3個分くらい」
「少しだけお時間ください」
シーバーでスタッフに指示を飛ばしながら、プロンプタのほうへ走っていく。
久住くんがしゃがみ込んで、私に原稿を見せた。