イジワル同期とスイートライフ
「よほど後ろめたかったんだね」

「後ろめたいって」

「いつもならあんなの、クールに流すじゃない?」



…そういえば以前は、久住くんといえば冷静で物静かなイメージだった。

今じゃ、だいぶ違う。



「会議、成功しそうだね、お疲れさま」

「ありがとうございます、海外営業さんには本当にお世話になって」

「うん、営業部内でも当初、反対意見あったんだよ、やっぱり自分たちにも特約店にも、それなりに負荷がかかるし」



指を消毒する私を、ドアに寄りかかったまま永坂さんが眺める。



「久住が説得して回ったんだよ、やるべきだってね」

「えっ…」

「むしろ、こうした合同会議を自分たちも積極的に開くべきだって。国内営業からやり方を学びましょう、って」



久住くんが。



「まあうちの部って基本軽いから、すぐにみんな乗り気になって」

「それなのに国内からの風当たり、ずっと強くて…申し訳ありません」

「六条さんが謝ることじゃないよ」



にこっと笑う。



「これを機に、いい交流ができるのを、僕も期待してるんだよ」



ホワイトボード上で随時更新される、会議の進行状況を確認して、永坂さんは出ていった。

絆創膏を巻きながら、それでもやっぱり謝ることだと思った。

私はなにもしなかった。

彼らがやっかみの捌け口になっているのを知りながら、それも仕方ないと他人の顔をしていた。

自分はそんなことしないし、なんてひとりで高潔ぶって、そのくせ彼らのためになにかするわけでもなく。


──納得させたいんなら、お前のこと聞かせろ。


私はいつも、人任せ。

飲み込んだ言葉を、誰かが言わせてくれるのを待っている。


いい加減、このままじゃダメなんじゃないの。


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