イジワル同期とスイートライフ
「こっちでどれだけ報道されてたか知らないけど、空港に24時間くらい軟禁くらって、銃とか持ってる奴に囲まれて、けっこうきつい思いしてたの。そのとき、そう思ったの」

「なんでそう思ったの?」

「だから泣くなって…」

「なんで思ったの」



改札を入ってすぐの場所で、涙を流した女に詰め寄られて、久住くんはいよいよ居心地が悪くなったらしく、落ち着きをなくしはじめる。



「帰ってから話さねえ?」

「もう一発いこうか」



ネクタイを引っ張ると、観念したように渋々口を開いた。



「お前が心配してくれてるって思えたら、ちょっと救われるだろ」



あーあー、と久住くんがあきれ声を出し、ぐちゃぐちゃになった私の顔を両手で挟み、のぞき込む。



「こんなとこで、こんな泣いちゃって、どうしたのお前」

「久住くんに言われたくないよ」

「俺別に、泣いてないし」

「原因だって言ってるの!」

「はいはい、どうせ俺が全部悪いんだろ」



開き直ったのか、私を抱き寄せて、「あとなに謝ればいい」と頭をなでながら偉そうに訊いてきた。



「…ずっと連絡くれなかった」

「そんなの、お前だって同じじゃん」

「私の言うこと、聞いてくれなかった」

「説得が甘いんだよ」

「飲みに行ったくらいで怒った…」

「それは、お前がルールを破ったからだ」

「謝る気ある!?」

「あるけどさあ」



あくまでも、それらに関しては自分は悪くないと言い張る気らしく、悪びれる様子もない。

この野郎!



「いつも、説明が足りない」

「うーん…」

「言葉がきつい」

「あー…それはごめん」

「私のこと不安にさせる」

「ごめん…」

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