イジワル同期とスイートライフ
「からかってんのか」

「違うよ、本気」

「楽しそうだな」



楽しいよ。

このへんだったよね、あの異常な事態が始まった場所。


思えば久住くんは、いつだってちゃんと、言ってくれていた。

わかりづらくても、多少乱暴でも、ずっと示してくれていた。

もしかしたらきっと、彼自身が意識するよりも前から。


"お前が欲しい"と。


どれだけヘタクソなの、私たち。

お互い、自分がなにをしているのかもわからず、こんなところまで来て。

今さらはじめの一歩みたいなことをしている。


だけど、別に遅すぎるなんてことない。

今から素直になればいい。


私も同じだけ、本気を返すね。

これまでの私みたいに、たくさん困ってね。

不敵さの崩れた、無防備な顔、いっぱい見せて。



「ねえ」



ついに、警戒して返事すらしてくれなくなった。

じろりと横目で見てくるだけ。

もうダメだ。

笑いと一緒に、言葉がこぼれ出た。



「大好き」



久住くんの顔が、戸惑いに歪む。

怒ったような表情で、けど開いた口からはなにも出てこず、そのうち困り果てた様子になり。

悔しそうに唇を噛んで、耳を染めて。



「だろうな」



腹立たしげな声で、そう言った。






Fin.

──Thank you!


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