イジワル同期とスイートライフ
駒井は先日結婚したばかりだ。

そりゃ、ないだろう。



「あ、久住って彼女いるんだ?」

「いや、いなくてもあんなの、行かないでしょ」

「てことは、いるんだ」



六条の声がよみがえる。


──今、彼女いるのって聞かれたら、どう答える?


聞かれたよ…。



「…えーと」

「え、なに、別れ話中とか?」

「いや、そんなんじゃないですけど」



これは、思っていたよりだいぶ、言いづらい。

よくあるプラスチックの白いガーデンチェアに、並んで腰かけた駒井が、興味深げに顔をのぞき込んできた。



「なんでそんな照れてんの」

「照れてはいないです…」

「えー、どんな子、どんな子?」



なんだこの会話。

地元産の、やけに苦いビールを飲みながら、えーとと言葉を探す。



「同い年で…」

「へー、かわいい系?」

「系…はわかりませんけど、見た目なら、かわいいよりは、きれい、かな?」

「中身は」

「中身…」



この出張の直前、六条の姉に散々からかわれたのを思い出した。

我ながら、もっとうまく対応できただろ、と恥ずかしくなる。


──リコちゃんのどこが好き?


全然似ていない姉だった。

しっかりして見えて案外抜けている六条とは逆に、ふわふわして見えて鋭い。

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