イジワル同期とスイートライフ
よくわからない。

読めたら苦労なんてしない、誰だって。


眉をひそめる久住に、花香がバカにしたような目つきを送る。



「あんたのそのかっこつけのハッタリが諸悪の根源だっつってんの」

「かっこなんかつけてねーし、なんのハッタリもかましてねーし」

「いっぺん振られろ」

「嫌だよ」



花香の眉が、ぴくりと上がる。

なに本気で答えてんだよ、と自分をたしなめ、恥ずかしくなった。

目を泳がせた久住の鼻先に、花香の指先が突きつけられる。



「あんたは優しいけど、冷たい。覚えときな」

「意味がわからん」

「自信満々で手を引いておいて、ある時点で急に、もう好きにしろって離すんだよ。てめーが連れてきたんだろってこっちは思うけど、あんたは『お前がついて来たんだろ』って言うわけ」



ぎくっとした。



「相手を尊重してるつもりだろうけど、突き放されたようにしか感じなかったよ」

「でも、実際お前、好きに歩けるタイプだったじゃん…」

「歩けるけどさあ」



花香のまっすぐな目が刺さる。



「抱き上げて運んでほしいときだってあるよ」



あれ…。

あれ、と急に息苦しくなった気がして、ネクタイの結び目に手をやった。


──いっつも男の子のほうがリコちゃんを持て余しちゃうの。


自分は違うと思っていたけれど。

もしかして、同じことをしているのか。

でも六条は、いつも凛としていて、弱みを見せたがらなくて、たぶん訊いても、悩みなんて打ち明けてはくれなくて。


…それは単に、言わせてやれていないだけなのか。

お前なら大丈夫だよなって、俺のほうが押しつけているだけなのか。



「同じ失敗するほどバカじゃないって、思わせてよね」



去り際の、花香の厳しい声が、痛かった。

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