イジワル同期とスイートライフ
 * * *


「これは、次回も同じ規模でやるとなると、弊社も増員が必要ですね」

「どんどん増員してよ、で、企画とかも提案して」



WDMも二日目、会議が滞りなく進んでいる合間をぬって煙草休憩をしていると、須加がやってきた。

現場の主担当として走り回っていた須加は、さすがに疲れを見せている。



「久住さんがこんなに現場に強いって知ってたら、最初から頭数に入れたのに」

「俺の仕事はアテンドだよ、入れられても困る」

「弊社、アウトバウンドのビジネスにも力を入れはじめてるんですよ、久住さんの部署と、なにかお仕事できたら嬉しいんですが」



抜け目ないな。

スタンド式の灰皿の上で煙草を叩いて、「あったら声かけますよ」と流した。

確かにこの男と仕事するのは、楽しそうだ。

動きがいいし、営業マンらしいあからさまな裏表があって、逆に信用できる。

だけど。



「ところで僕、六条さんをお誘いしたいんですが、いいですか」



吸おうとしていた煙草を、思わず口の前で止めた。

横目で須加を見ると、こちらを探るように微笑んでいる。



「…なんで俺に、そんなこと」

「微妙な関係だとお聞きしたので」



六条の奴。

微妙ってなんだよ。



「いいですか?」

「…いつ」

「できたら今日」



ついした舌打ちを、聞かれなかったと思いたい。

思い出すだけではらわたが煮えくり返る。

飲み会の、店を変える途中で、この男と六条が出てきたのを見たとき。


今でも理解できない。

まるで理にかなっていない説明で、終わらせたいと言ってきた六条。


ふざけんなよ。

誰がそんなんで終わらせるか。

お前だって、本気で思ってなんかいないくせに。

その証拠に、ちょっとつつけばボロを出す。

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