イジワル同期とスイートライフ
なんで俺を試すようなこと、するんだよ。

なにがしたいんだよ。



「六条さん、WDMでいろいろお疲れでしょうし、労わせてもらおうかなと」

「誘うのはいいけど、手出さないでくださいよ」

「微妙なわりには我が物顔ですね」



じろりと見ると、降参のしるしみたいに手を挙げてみせる。



「約束できないんなら…」

「します、しますよ。約束します」



腹が立つ。

この男にも、六条にも。

自分にも。


どうして誘うなとはっきり言えないんだろう。

今の関係であれば、その権利は自分にあるはずなのに。


今度は六条を試したいのか?

それも少し違う気がする。



「なんで"微妙"なのか、彼女のほうから聞きたいな」

「もう誘い出せる気ですか」

「ひどいな、これでも僕と飲みたいって女の子、多いんですよ」



そう言うと、吸殻を灰皿に落として、喫煙所を出ていく。

そうだろうな、と見送りながら思った。


行くなよ、六条。

絶対行くなよ、頼むから。


ああそうだ、たぶん自分は、自信がないのだ。

これ以上、六条を自分の勝手で振り回していい自信がない。

ここから先は、六条に決めさせてやりたい。


これが花香の言った、途中で手を離すってことなんだろうか。

だとしたって、どうしようもない。

だって自分の気持ちは、きっともう決まっている。

あとは六条なんだ。

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