イジワル同期とスイートライフ
答えてから、私がなにも言わないせいか、そわそわしだした。



「え、その質問、なに」

「ううん、ごはん、どうしようね」

「はぐらかしてるよな?」

「仕事したいなら、家で食べたほうがいいよね、作ってあげるよ、なにがいい」



ホームに滑り込んできた電車の車体が濡れている。

ほんの数分の間に降りだしたらしい。

久住くんの視線を無視して乗り込むと、彼も追及をあきらめたらしく、ひとつ息をついて、私の後からドアをくぐり。



「ハンバーグ」



面白くなさそうに、小学生みたいな返答をして、家に着くまで止まらないレベルの笑いを提供してくれた。





「いい加減、笑うのやめろよ」



玄関を入ったところにあるキッチンで、リクエスト通りの夕食を準備していると、部屋の中から不機嫌な声が飛んできた。

タネをこねながら、ますます笑ってしまう。



「おい!」

「痛!」



いきなりお尻を叩かれて、飛び上がった。

いつの間にかすぐ後ろに、久住くんが立っていた。

雨に打たれたためシャワーを浴びたところで、身体からボディソープの香りをさせている。



「仕事終わったの?」

「終わるわけねーだろ、水飲みに来たんだよ」



すっかりふてくされた様子で、冷蔵庫からペットボトルを出す。

2リットルのボトルを直にあおるのを、ちょっと、といさめた。



「口つけないでってば」

「あ、悪い」



水切りカゴからグラスを取ると、改めて注ぐ。

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