イジワル同期とスイートライフ
「インタホン鳴ってんだけど、俺出たらまずいだろ?」

「なんだろ、宅配便かなあ?」

「じゃ、出とくわ」



よろしく、とお願いして、一緒に洗ったタオルを干してから部屋に上がると、久住くんがインタホンの前で青くなっていた。



「どうしたの」

「…姉ちゃんだった」

「久住くん、お姉さんもいるの?」

「違う、お前の」



…え。

え、お姉ちゃん?

って。



「う、うちのお姉ちゃん? が、来てるってこと?」

「そうだよ、今上がってくるって、やべ、俺、全然心の準備できてねえ」

「心の準備って」

「わかれよ」

「とりあえず、服着て、服」



そうだった、と慌ただしくバスルームに飛び込む。

私はベッドを整えつつ、部屋に点在する久住くんの洗濯物や鞄なんかを拾ってクローゼットにしまった。

なんとなく、一緒に暮らしている感を消す必要を感じたからだ。



「なあ、俺、どう振る舞えばいいんだ」

「どうって、彼氏なんでしょ」

「いや、それでいいわけ?」



バスルームから焦った声がする。

それでいいわけ、って。



「自分が言いだしたんでしょ!」

「そうだけど、身内相手じゃ話が違うだろ。お前がいいなら、いいけど…」



洗面所の痕跡も消そうとバスルームを覗くと、勘のいい久住くんが、シェーバーと自分の歯ブラシを投げてよこした。

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