イジワル同期とスイートライフ
「リコちゃんとはなに繋がりなの?」

「同期です、最近、仕事が一緒になって、それで」

「賢児くんはなんのお仕事してるの?」

「え? えーっと、俺は海外の取引先との契約を管理したり、先方に卸す製品の計画を立てたりする仕事をしてます」

「どっちから告白したの?」

「えっ? 告、というか、それは…」



姉の話題はあちらこちらに飛ぶので、慣れない人は振り回される。

ちょうどそのあたりで、できあがったスープをトレイに載せて部屋に戻った。

久住くんが、きまり悪そうに私のほうを見る。



「…俺、です」



なんでよりによって今来るんだよバカ、と目で責められたので、当然狙ったんだよバカ、と目でせせら笑ってあげた。



「うわあー、そうなんだ」

「あの、こういう話、俺、あんまり」

「賢児くん、耳赤ーい、かわいい」



完全にペースを持っていかれて、久住くんはもう顔を伏せる勢いで参ってしまっている。

珍しいものを見られたなあ、と飲み物に手を伸ばしたとき。



「リコちゃんのどこが好き?」



私はお茶を、久住くんはビーンズサラダを吹いた。



「あのさ、お姉ちゃん、もう」

「あっ、『全部』とかはなしで、ちゃんとひとつひとつ挙げてね」



無駄にお題出し慣れてるな!

顔を赤くした久住くんは、私と姉を交互に見て、なにか言おうと口を開くものの、なにも出てこない。

そりゃそうだ、好きでもなんでもないんだもの。

さすがにかわいそうになって助け舟を出そうとしたら、先に姉が口を開いた。



「この子ねえ、しっかりしすぎてるから、敬遠されちゃうんだよね」



うわっ、まさかの私の過去話か。

一瞬、条件反射で止めようと思ったけれど、やめた。



「いっつも男の子のほうがリコちゃんを持て余しちゃうの、理不尽だよね」

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