イジワル同期とスイートライフ
久住くんが、いいのか、という感じに目を合わせてくる。

私たちが、そういう話をお互いに打ち明けるような段階には、まだ至っていない自覚が、彼にもあるんだろう。

まあ、今日は仕方ない。

恥ずかしくはあるけれど、知られて困る話でもないし。



「やっぱり男の人って、頼られたいものなのかなあ。でもそれなら最初から、リコちゃんじゃなくて、もっと甘えた子を選べばいいのに」



眉をひそめて話す姉は、私が男の子とうまくいかなくなるたび、私より腹を立てて悲しんでくれた。

別に気にしてないと言っても、「そんなの嘘!」と言って自分が泣いていた。

いい姉なのだ。



「もしくは、リコちゃんが甘ったれのダメ男好きならいいのにね」

「冗談でしょ、自立してない人なんて論外」

「世の中うまくいかないねえ。ね、賢児くんもそう思うよね」

「え」



はっと顔を上げた久住くんが、姉の問いかける視線に、戸惑いを見せた。



「あ…ええっと」



フォークでサラダをつつきながら、ためらいがちに言う。



「俺は、相手がしっかりしてても、別に気にならないので」

「えー、でも、たまには甘えてほしくならないの?」

「そりゃ、なりますけど」



なるんだ。

意外にそういうところ、普通の男の人の感覚なんだな。

引き出し上手の姉に、もう少しいっちゃって、とエールを送る。



「でもそれは、六条じゃなくて、たぶん男の側の問題で」



私と姉が見守る中、言葉を探して難しい顔をしている。

姉が首をかしげた。



「男の側の問題って?」

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