イジワル同期とスイートライフ
「覚えてるけど、謎だ」

「すごくよくわかる」



軽い二日酔いのせいで、喉が渇く。

彼も同じらしく、早くも私たちの水のグラスは空に近い。


私と久住くんは同期だ。

今年で5年目、私は27歳、彼も同い年のはずだけど、浪人していたりダブっていたりして、違う可能性はある。

要するによく知らない。

同期だからといって特に仲がいいわけでもなく、今たまたま同じ案件に携わっているだけで、それが始まるまではまともに話したこともなかった。

技術職も含めると毎年100名近い新入社員が入るこのメーカーで、同期なんてそんなものだ。

ただ名前と顔は知っていた。


海外営業部という近年の花形部署において、あらゆる市場を見る立場にあり、着実に成果を挙げている企画課の一員。

若手の中では確実に、一番の注目株。


昨日は彼と、彼が連れてきた海外営業部の先輩たちとで飲んだのだった。

同じ営業部と名はつくものの、私のいる国内営業部と彼ら海外営業部はまったく別の部門扱いで、普段は接点がない。

今携わっている案件のおかげで国内営業と縁ができた久住くんが、物珍しがる先輩たちから、私を誘って飲み会を開くよう言われたのが事の発端だった。

場所は会社近くの居酒屋。

お酒好きで話好きの先輩2名は、積極的に場を盛り上げてくれて、あるときお手洗いから戻ったら、久住くんを残して消えていた。



『ひとりが吐きそうになって、慌てて送って帰った』

『あらら』

『六条、家どこ? もう少し飲めるよな?』

『ん、まだかなり平気』



初めてじっくり話をした久住くんは、印象通り、頭がよくて面白かった。

お酒もほどよく強く、男の子らしくよく食べて、自分の評価を鼻にかけるでもなく、海外事業について惜しみなく情報をくれた。

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