イジワル同期とスイートライフ
愛される、とは
その夜はひどかった。
せっかくそれなりに時間をかけて見つけた、お互いのいいところを全部無視して、取っ組み合いみたいな状態になった。
夕方から吹き荒れ始めた風雨が、調子を合わせるように激しく窓を叩いた。
汗だくで、息を切らして、それでも相手を貪る。
あの久住くんが、口をきく余裕もなくして、ひたすら私をかき抱く。
荒い吐息と、昂る瞳と、濡れた背中。
しがみついて、意識を失わないようにしているのが精一杯だった。
私たちはいったい、どうなってしまったんだろう。
『賢児くん元気?』
「げ…んき、かな、うん」
声を低めながら、背後のベッドを振り返った。
裸の腕を投げ出して、久住くんが泥のように眠っている。
枕に半分埋まった、熟睡の寝顔を見て、考えてみたら彼は、帰宅した時点で相当疲れていたはずだと思い至った。
姉がくすくすと笑い声をたてた。
『愛されてていいねえ、賢児くんのこと、大事にしなね』
うん、とうまく言えていたかどうか。
愛されている、だと?
たとえばそれって、どういうこと?
「六条、お前も外?」
翌日の昼休み、負荷が集中してなかなか来ないエレベーターを待っていると、脇の階段から声をかけられた。
久住くんだ。
「いい天気だから」
「じゃあ一緒に行こうよ」
後ろから顔を出したのは、吾川くんだった。
階段のほうが早い、とふたりに連れ出され、5階分を下りきる頃には、疲労より目が回ってひいひい言っていた。
「少し痩せたろ、よかったな」
「六条さん、もとから細いじゃん」
「俺もそう言ってんだけど、こいつがさ」
すかさずスーツの後ろから手を入れて、腰のあたりをつねった。
せっかくそれなりに時間をかけて見つけた、お互いのいいところを全部無視して、取っ組み合いみたいな状態になった。
夕方から吹き荒れ始めた風雨が、調子を合わせるように激しく窓を叩いた。
汗だくで、息を切らして、それでも相手を貪る。
あの久住くんが、口をきく余裕もなくして、ひたすら私をかき抱く。
荒い吐息と、昂る瞳と、濡れた背中。
しがみついて、意識を失わないようにしているのが精一杯だった。
私たちはいったい、どうなってしまったんだろう。
『賢児くん元気?』
「げ…んき、かな、うん」
声を低めながら、背後のベッドを振り返った。
裸の腕を投げ出して、久住くんが泥のように眠っている。
枕に半分埋まった、熟睡の寝顔を見て、考えてみたら彼は、帰宅した時点で相当疲れていたはずだと思い至った。
姉がくすくすと笑い声をたてた。
『愛されてていいねえ、賢児くんのこと、大事にしなね』
うん、とうまく言えていたかどうか。
愛されている、だと?
たとえばそれって、どういうこと?
「六条、お前も外?」
翌日の昼休み、負荷が集中してなかなか来ないエレベーターを待っていると、脇の階段から声をかけられた。
久住くんだ。
「いい天気だから」
「じゃあ一緒に行こうよ」
後ろから顔を出したのは、吾川くんだった。
階段のほうが早い、とふたりに連れ出され、5階分を下りきる頃には、疲労より目が回ってひいひい言っていた。
「少し痩せたろ、よかったな」
「六条さん、もとから細いじゃん」
「俺もそう言ってんだけど、こいつがさ」
すかさずスーツの後ろから手を入れて、腰のあたりをつねった。