イジワル同期とスイートライフ
「人傷つけてまで続ける意味がわからないってこと」

「なんで他人を絡めてくるんだよ? 俺らの話だろ。俺とお前の話だ」

「でも、実際、幸枝さんみたいに…」



声が震えて、続きが消えた。

顔を覆おうにも久住くんが近すぎて、なにをしたところで全部見られて終わりだ。



「それ、ノーってこと?」



はっとした。

見下ろす目と、視線がぶつかった。



「終わりにしたいってこと?」



微笑むわけでもなく、バカにするでもなく。

久住くんの表情は、読めない。


終わりにしたいってこと?

…そうかもしれない。

もとから不自然だったこんな関係、もう切り上げどきってことなんだろう。


目を見ることはできずうつむいて、なんとかうなずく。

肩を押さえつけていた手が、緩んだ。



「そっか」



解放の気配に、身をひるがえそうとした瞬間、目の前を腕が塞いだ。



「なんてな」



通せんぼするように、壁についた手で逃げ道を封じて、久住くんが笑う。

彼の腕と、身体と、壁との間にできた狭い空間に閉じ込められて、どこにも行けなくなった私を、観察するみたいに見下ろす。



「"言って"ないだろ、お前。そんなの認めない」

「なに…」

「ほんとに終わりにしたいと思ってんなら、お前の口で言え」



ここで、と教えるみたいに私の唇を奪った。

押しつけるようなキスに、頭が背後の壁をこする。



「言えよ、聞くから」

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