イジワル同期とスイートライフ
久住くん、私ね、すごく嫌なの。

女の子に優しくされるのも嫌だし、私以外の誰かとふたりで会われるのも嫌。

合コンなんてもってのほかだし、新しい部屋も見つからなければいいと思ってる。


でもそんなこと思う権利なんてないってこと、わかってもいる。

それに気がついたとき、ショックを受けたの。


流されたふりをして、強引さに負けたふりをして、全部久住くんのせいにしてここまで来た。

それなのに、今さら久住くんは私のものだなんて。

いったいどんな顔して言えるの。


枕を掴んでいた私の指を、一本一本剥がすようにして久住くんが握った。

シーツの上で、指がきつく絡む。

ぼやけた視界に、久住くんの顔が映る。


吐息が唇をかすめて、一瞬後にキスが来る。

待ち焦がれていたキス。



「六条…」



かすれた声が、呻くように呼んだ。

返事をする余裕はなかった。

久住くん、なんて口にしたら、泣きだしそうだったから。


こすれ合う肌の間で、汗が飛沫になって散る。

もう一度呼ばれたとき、頭の中が白く弾け飛ぶような感覚に襲われて、私はたぶん叫んだ。

波打つ身体を抑えられなくて、噛みつくようなキスをされて、繋いだ手だけは離すまいと握りしめて、その後はもう、覚えていない。





意識が戻ったとき、部屋は暗かった。

慣れないシーツの感触に混乱し、すぐに思い出した。

久住くんの胸に抱きつくように眠っていたらしく、お互い裸なおかげで、くっついていた部分の肌が汗で湿っている。

フットライトを頼りに時計を見れば、日付の変わる少し前。


枕に頭を戻して、しばし考える。

これは、帰るべきだろう。


そっとベッドを出て、シャワーを浴びた。

バスタオルを身体に巻いて、あちこちに散らばった服を拾い集める。

下着がどうしても見つからなくて、紛れてしまったかと布団の足元のほうをめくったとき、久住くんが身じろぎし、顔がこちらを向いた。

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