イジワル同期とスイートライフ
「酔っぱらい」

「だって楽しくってさ」

「誰とそんなに飲んだのよ?」

「不動産屋の営業の兄ちゃんが同じ大学で、しかも同い年でさ、思わず意気投合して異業種交流してきた」

「まさか契約したときは素面だったんだよね」



おう、とわかっているんだかいないんだかの適当な返事をして、今度は正面から抱きついてくる。

重みに耐えきれず、久住くんごと後ろに倒れた。



「いつ入居なの」

「今の部屋と家賃がかぶんないように、来月まで待ってもらった」



つまり出ていくまで、あと二週間ないってことだ。



「仲介業あるあるが、また笑えるんだ」

「はいはい、お酒が抜けたら教えてね」



ベッドに仰向けになった私の上から、犬かなにかみたいにじゃれついて、バスタオルの中で私に無邪気なキスをする。

久住くんて、酔うと人としてのハードルが下がるのかなあ?

普段から技能としての社交性は持っていても、人懐こいイメージはないのに。

私の首筋に鼻を埋めながら、あーと後悔しているような声を上げる。



「お前も呼べばよかったなあ」



水滴の散った身体にのしかかられた、不自由な状態でも胸は鳴るのだ。

そんな楽しい時間を、私と共有したかったと言ってくれる。

それは同期としてなのか、"彼女"としてなのか。

いずれにせよ嬉しいよ、バカ。


いい加減重いと言おうとして、彼が寝てしまったことに気がついた。

苦心して身体の下から這い出す。



「…寝ぐせついちゃうよ」



湿った髪に指を通しても、なんの反応もない。

熟睡だ。

裸同然の身体に布団をかけて、しばらく寝顔を見守った。

こんなひとときも、もう終わるのだ。

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