イジワル同期とスイートライフ
ちょっと前まで、取引の相手はみんな年上だった。

それが最近急に、最前線で活躍する同年代と出会うことが増えた。

そういう年齢になったということなんだろう。


かわいらしい外見に反して、落ち着いた仕草でてきぱきと話を進める花香さんも、これだけの仕事のフロントをひとりで務めるだけの人なのだ。

女性ということもあり、妙な仲間意識と無駄なライバル心が芽生えてきて、くすぐったくて少し笑った。



「ホテルに直行されるお客様もいらっしゃるということですね。ではその分のご案内状はホテルに預け、各部屋に配布してもらえるようにしましょう」

「それができると助かります」

「当日お客様のご予定が変わった場合に備えて、ホテルと会社を行き来できるスタッフを用意します。イベントパスは予備が持てませんので、このやり方がベストかと思います」



花香さんの提案で、懸念事項が次々解消されていく。

気持ちのいい仕事ぶりだなあ。

小さめの会議室で、あれよあれよという間に打ち合わせが終わってしまった。



「では、私はこれで失礼いたします」

「タイムテーブルってすぐ更新できるかな」

「はい、今日中には」



代理店営業の須加(すが)さんが、花香さんを見て頼もしげに微笑む。

花香さんは荷物をまとめると、ぺこりと頭を下げて出ていった。

あまりにスムーズに進みすぎて、久住くんが間に合わなかった。

まあ、主担当である須加さんを紹介できれば十分か。



「じゃあ、ちょっと別の件をご相談しても構いませんか?」

「はい、もちろん」



須加さんが、特約店会議本体の最新スケジュールを配布する。

余りを脇に置いたとき、花香さんの座っていたソファにペンが落ちているのを見つけ、拾い上げた。



「あれ、誰のかな」

「花香さんのだね」

「ですね、まだ追いつけるかも」



さすが幸枝さんは、花香さんが使っていたのを覚えていた。

淡いピンクのペンで、かわいいなあと私も見ていたのだ。

まったくそんなところに注目していなかったらしい須加さんが、「男はダメだねー」と幸枝さんにからかわれているのを背後に、ペンを持って廊下に出た。

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