イジワル同期とスイートライフ
「え?」

「元カノ」



あ、元カノか。

なるほどね、…って。



「え、元カノ!?」

「しかも直近…」



うあー、と頭を抱えて天を仰いでしまう。

直近って。



「さっき花香さん、久住くんに気づいた?」

「いや、たぶん平気」



それは平気と言うのか。



「あいつチビだから、普通にしてたらこっちの顔見えないんだよ、助かった」



相当焦ったらしく、持っていた紙資料で顔をあおいでいる。

ほっとしている久住くんとは対照的に、私は自分でも驚くほどのダメージを受けていた。


あいつとか、チビとか、言っちゃうんだ。

きっとつきあっている間に、身長が理由で向こうがこっちに気づかない、みたいなことが、何度もあったんだね。

そのことをからかったり、それで怒らせたりしたんだね。


言い方とか言葉の選び方とかから、そういうのって驚くほど透けて見えるものだ。

なにこれ、けっこうつらいんだけど。



「やばい、動揺が抜けない」

「そんなに?」

「俺、ダメなんだよ、別れたら完全に縁切りたいクチなんだ。友達に戻るとか、ほんと考えらんなくて」



雷に打たれたみたいなショック。

手が震えてきて、そんな自分にうろたえた。



「でも、いつまでも避けらんねえよな、時間の問題だよな…」

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