イジワル同期とスイートライフ
「同い年?」

「そう」

「なんで別れたの?」

「…まあ、なんとなくうまくいかなくなって」



そういうものか。

あんなにかわいくて、感じがよくて、仕事もできて、それでダメなんて。



「久住くん、理想が高いんじゃないの」

「そうでもない、と思うけど…」



ダメだ、この人、もう上の空だ。

仰向けで、顔の上にかざした名刺を凝視する姿を、横から眺めた。


もやもやする。

今はどうあれ、花香さんとは好きでつきあったわけで。

一方の私は「嫌いじゃない」の域をいまだに出ていないわけで。

黙り込んだ私に気づきもしないらしく、久住くんはなにを考えているのか、ぼんやりと名刺を見つめていた。



当然なんだけど、久住くんは、私が彼を好きとは夢にも思っていない。

今日の態度で、それを痛感した。


お互いを彼氏彼女と思って生活する、という契約には、相手の元カノに複雑な思いを抱いたりするような、感情の部分は含まれていないのだ。

それはもちろん、彼自身にも言える。


私たちのつきあいは、言ってみれば形だけ。

気持ちは空っぽのまま、外側はなかなかうまくできている。


とはいえ今日も久住くんは、おやすみのキスひとつ落としただけで寝てしまった。

発情期が終わりでもしたんだろうか。

それとも飽きた?

真正面から訊きたいけれど、訊けない。


私の頭を抱くように眠っている久住くんの身体に、思い立って腕を回して抱きついてみると、すぐにきつく抱きしめ返してくれた。

寝ぼけているせいか、力加減ができていなくて、痛い。


ほらね、形だけなら完璧な、恋人同士の図。

だけど空洞である中心に、間違って本気なんてものを注ぎ込んでしまったら。


それはいわゆる、"重い"という状態なんじゃないか?


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