イジワル同期とスイートライフ
過去のふたり
『メールいただいた件ですが、ちょうど確定のご連絡をできそうでして。明日の運営会議でご報告させていただく形でよいでしょうか?』

「はい、ありがたいです、お願いします」

『なるべくマニュアルを埋めておきたいので、海外の…営業部の方でしょうか、ご担当者様のお名前をいただけますか』



うわ。

受話器を握りしめ、心の中で手を合わせた。

ごめん久住くん、これはどうしようもない。



「久住といいます」

『久住さんですね、かしこまりました』



なにか投下してしまったかとびくびくする私をよそに、特にこれといった反応もなく、花香さんは話を終えた。

まったく気づいていないんだろうか。

それはそれで、明日が気の毒な気もする。

椅子の背にもたれて、ふうとため息をついたとき、声がした。



「特約店会議の担当はどの人?」



幸枝さんはいない。

はいと手を挙げて、早まったと思った。

声の主は、営業課の中でも、口うるさいので有名な人だったからだ。





「遅くなりました…」

「うわっ、やつれてるよ乃梨子ちゃん、大丈夫だった?」

「まあ、なんとか」



疲労困憊で定例会に合流すると、幸枝さんが心配そうに手を差し伸べてくれた。

うう…と泣きたい気持ちでその手にすがり、席に着く。



「どうしたの?」



購買部の男性も同情気味に尋ねる。



「部内から物言いがつきまして」

「なんて」

「まあいろいろ言われたんですが、要約すると、営業部長と本部長の宿泊先がこれまでと違う場所になったのが気に入らないらしいです」

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