イジワル同期とスイートライフ
「あきれてる?」

「なにに?」



退社のタイミングが合いそうだったので、久住くんと飲んで帰ることにした。

駅ビルの地下の居酒屋に入り、カウンター席に並んでビールで乾杯をする。

終業後に会った彼は、まだ定例会のムードを引きずっているようで、普段より寡黙で、なにか考え込んでいるように見える。



「国内営業って、バカばっかだなとか」

「別にあきれてねーよ、いや、近いことを思ってはいるけど」



そりゃ思うよね。



「厄介な人ばかりじゃないんだよ」

「そんなん、お前見てりゃわかるよ」



…久住くんて、たまにこういうこと平気で言うの、ずるいよなあ。

緩んだ頬を見られまいと顔をそむけた私には気づかず、お通しをお箸でつつきながら、久住くんは生真面目に話を続けた。



「国内は、つきあいが狭くて固定されてんのが問題なんだと思うよ」

「膿が溜まっちゃう?」

「だな。別に海外部門に潔癖な人間が集まってるわけじゃない。単に文化とか言葉の違いがフィルターになって、趣味の悪さまで相手に伝わらないだけだ」

「フィルターなんだね、壁じゃなくて」

「壁…と感じることもまあ、あるけど。でも人づきあいには、適度な壁って必要だろ」



ちょうど彼の左側にあるお店の壁を、コンコンと指で叩く。

うまいこと言う。



「会議にかこつけて女の子の店で遊ぶなんて、非常識もいいとこだろ、それがまかり通ってんのがもう、集団として病んでんだよ」

「どうして誰も止めないのか、私も疑問で仕方ないの」

「自浄機能がないってのは、よくないよな」

「たぶん、そこでの会計なんかも、グレーゾーンぎりぎりだと思うんだよね」

「やばいぜ、それ、このご時世に」

「監査部に密告でもしようかなあ」

「お前の立場がやばくなんなきゃ、それを勧めたいけど…」



そこは誰が保証できるものでもなく、久住くんも言葉を濁してしまう。

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