今、2つの色で


あたしは2度繰り返されたその放送が終わってから、駿に声をかけようと口を開こうとした瞬間、顔を上げた駿と目が合った。


「あ、駿」


目が合ったことは予想外で、あたしは用意していた“3年A組に行こう”という言葉を言いそびれてしまう。


でも駿はあたしに笑いかけて、立ち上がる。


「3のAまで来いだって、行こう凛夏」


駿はそう言って今まで勉強していた教科書などを鞄にしまうと、そのまま鞄を持ってドアの方まで歩き出した。


あたしの用意していた言葉を、読み取ってくれたみたいで。

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