今、2つの色で
楠森はピクリとも動かなかった。
静かな風が、俺たちの前髪を揺らす。
「…東条…あの東条に間違いないよな…」
楠森の耳元で、低い声で言い放つ。
俺の怒り、そして虚しさ。
それらは度を越した痛みとなって、俺の身体中を駆け巡って。
「…ごめんね逢坂」
俺に胸倉を掴まれたままの楠森は、そう呟いた。
風が吹いた、その瞬間。
俺たちの友情は今度こそ、ひとかけらも残さず、消え去っていった。
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