今、2つの色で


“頑張ってきて”なんて笑って、大人の女性みたいなかっこいいことが言えなくて。


あたしは泣いて駄々をこねることしかできない。


「ごめんな…でも俺もお前への想いと引越しのことは、今日言おうと思ってたんだよ…お前のことだから絶対悲しむだろうって思った、ギリギリまで悲しむ顔見たくなかったんだよ、悲しんでほしくなかったんだよ」


そんなこと、言ったって。


悲しいに決まってるじゃん、悲しいよ。


悔しいよ。


でも、でもね。


逢坂のその優しさを“嬉しいもの”として受け止めたいと思う自分もいるから、苦しくて、切なくて。


逢坂があたしの腕を引っ張って、強く強く抱きしめる。


潰れてしまうんじゃないかと思うくらい。


そんなあたしは、ただ逢坂の肩を涙で濡らす。


スポーツ大会が終わってからわざわざ結び直したポニーテールはもうぐちゃぐちゃで。


少しでも可愛くなりたくて塗ったリップはもう色を失っていて。

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