愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「ヅラちゃん、家、このへんなん?」

「い、いえ…家は違うんですけど…この近くでバイトしてるんです。」

「そうなんや。
僕、ここの隣の駅やねん。
でも、こっちの方がスーパーも大きいし、いろんなもんが揃てるから、ここにはよう来んねん。
隣の駅からチャリ漕いで。」

「そうなんですか。
実は、私…ここに来たの初めてなんです。」

「え?なんで?」

「そ、その…バイト始めたのが昨日なので…」

「そうなんや。」

キースさんの穏やかな話し方のせいか、なんとなく緊張がほぐれて来た時に、テーブルの上に置いてあった昔の携帯みたいな機械がピーピーと鳴った。



「あ、ラーメン出来たみたいやわ。」

そう言って、キースさんは立ち上がった。



あ、そっか。ここはセルフだから、自分で取りに行くのか。
出来たってお知らせも、今はあんなので知らせてくれるんだね。



(あ、私…キースさんに任せっきりで何もしてない!)



今頃、そんなことに気付いても遅いっていうの。
もう~っ!私ってどうしてこんなに気が利かないんだろう…



「はい、お待たせ。
熱いから気ぃ付けや。」

キースさんは、ラーメンのどんぶりを私の前に置いてくれた。
そしてまたすぐにカウンターに戻って行く。



「ソフトクリームは後で頼んだら良かったな。」

戻って来たキースさんは、そう言って苦笑いを浮かべる。
その表情がなんだかすっごくキュートで…私はまた顔の熱が上がっていくのを感じた。


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