愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「……ん?どうかした?」

戻って来るなり、キースさんがそう言った。
きっとまた私の顔はゆでだこになってるんだ。
でも、どうしようもない。



「お腹いっぱいになったら、なんだか熱くなっちゃって…」

言い訳にもならない言い訳をして、愛想笑いで誤魔化した。
キースさんは納得したのかどうかわからないけど、小さく頷いた。



「ほな、行こか。」

そう言うと、キースさんは自分の荷物を手に取って、そして、もう片方の手で私の大きなレジ袋をひょいと持ち上げた。



「あ、それ……」

「駅まで持って行くわ。」

「そ、そんな…」

「かめへん。かめへん。」

わ、わ…どうしよう…
でも、焦るばかりで、何も出来ない。
キースさん、両手に荷物でなんかすごく大変そう…



でも、無理にもぎ取るのもなんか変だし…
仕方ない…持って行ってもらおう…



「キースさん、すみません。」

「ん?何が?」

「その…荷物持ってもらって…」

「僕、こう見えても女性には優しいねん。」

冗談めいて言ってるけど、まさにその通り。
キースさん…本当に優しい…優しすぎるよ!



駅の方に歩いてしばらくして…私はあることに気が付いた。



「あ、キースさん!お金!」

「え?お金て何の?」

「さっきの食事代、払うの忘れてますよ!」

「え?あそこは前払いやで。」

「え??」

あ、そっか。
フードコートってそういう所が多いんだっけ?



(あ……ってことは……!?)


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