愛しのカレはV(ヴィジュアル)系




「……ゆ、望結!」

「え?えっ!?な、何?」

「何って……おまえ、目開けたままで寝てたのか?」

「そ、そんな器用なこと出来ないってば!」

瑠威が私のことを怪訝な顔でみつめてる。



そりゃあ、確かに今、キースさんのことを考えてたよ。
早くさゆみに電話したいとも思ってて…でも、ちゃんとごはんを食べてた…はず。



「思いっきり間抜けな顔してフリーズしてたぞ。」

「ま、間抜けって…」

全く…瑠威は口が悪いんだから…



「望結…どうかしたの?」

「ママまで何言ってんの?
どうもしてないよ。」

「でも……」

「ちょっと、か、片付けのこと考えてただけ!」

咄嗟に私はそんなことを言って誤魔化した。



「片付けって…あぁ、今日百均で買って来た小物のことね。」

「う、うん、そうなんだ!
すごく可愛いものたくさん買って来たから…
どんな風に飾ろうかなって思って…」

ママのナイスな一言で、なんとかその場を取り繕うことが出来た。



「なんだ、最近流行りのリノベ女子か?」

「そんなたいそうなもんじゃないよ。
台所を中心に、少し可愛くしようかなって思ってるだけ。」

「今でも十分綺麗だと思うけどなぁ…」

「可愛さが足りないでしょ?」

「台所に可愛さなんて必要か?」

瑠威って、年の割になんだかおじさん臭い時がある。
今の言い方なんて、まさにおじさんだったよ。
呆れてしまって、返事をする気も失せた。
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