愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
私は、少しずつ二人から離れ、一番後ろでライブを見てた。



「じゃあ、またな!」



アンコールが終わって、場内が明るくなった。
アンコールは今終わったばかりだというのに、すでに「アンコール!」の声が聞こえ、それはどんどん大きくなっていく。



「璃愛~!」

さゆみが、私をみつけて駆けて来た。



「大丈夫だった?」

さゆみは、私のかつらを見てそう訊ねた。



「うん…まぁね。」

「良かった。あ、クロウさんとオルガさんがいるよ!
今、ちょっと話に行こうか?」

さゆみがクロウさん達に気付いて、目を輝かせた。



「い、今はやめとこうよ。
すぐに次のアンコールが始まりそうだし。」

「それもそうだね。じゃあ、前にいこ!」

「う…ん。私はここで良いよ。」

「なんで?」

そんなの、さっきのことが恥ずかしかったからに決まってるじゃない。
だけど、そう言ったら、そんなこと気にすることないって言われそうだったから…



「う、うん、前は暑いから…私、暑いの苦手だし…」

そう言って、私は笑って誤魔化した。



「そう?じゃあ、またあとでね…」

さゆみは、特に私の言ったことを疑うことなく、前の方へ戻って行った。
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