愛しのカレはV(ヴィジュアル)系




「なにか良い事でもあったのか?」

「……えっ?」

朝ごはんの時、いきなり瑠威にそう言われた。



「え…えっと、そ、その……」

「わかった。さゆみちゃんと仲直り出来たんだろ?」

瑠威がしたり顔でそう言った。



「え?あ、瑠威、鋭いっ!」

本当は見当はずれだけど、本当のことなんて言えないから、却って都合が良かった。
そうだよ、私、昨日、さゆみと喧嘩したことになってたんだ。



「そんなこと、お前の顔見りゃわかるさ。」

「そ、そんなに顔に出てた?」

「丸わかりだ。」

瑠威は得意そうに笑ってる。
その顔見てたらちょっといらっとするけど、私も同じように笑っておいた。



(それに、今の私は本当に気分が良いんだもん…!)



あ~あ、私って単純…!
キースさんからLINEが届いただけで、こんなにウキウキしてしまうなんて…
あ、いけないっ!
また顔がにやけそうだ…
笑っちゃダメ!



「望結、今日は藤堂さんのバイトは行くの?」

「うん、そのつもりだけど…」

「そう…ママ、今日はお店休みだから…」

そう言いながら、ママはちらっと瑠威を見た。



「俺も有給取ったんだ。
だから、二人でデートしてくる。」

「ごめんね、望結。」

「今度、また、三人で出掛ける日を作るからな。」

「何も謝ることなんてないよ。
楽しんで来てね。」

「ありがとう。今夜のお夕飯はいらないから。」

そう言うと、ママは私の前にお金を差し出した。



「良かったら、さゆみちゃんとどこかでお食事でもして来たら?」

「あ、ありがとう!」

わ!臨時収入だ、嬉しい!
夜はなにか簡単なものを作って、これは服代にまわそう!
良い事って続くんだな…なんて思いながら、私は朝ごはんをたいらげた。
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