愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「もうじきだね。」

「う、うん、そうだね。」

少し離れた所に立って、改札を出て来る人達を確認する。



「あ、あれ…!?」

「う、うそ…!」

降り立つ人の波の中に、一際目立つカッコいい人がいた。
背が高くすらりとして、長い髪をなびかせて…
それは私達の知ってる人…



「あれ?ヅラ子じゃないか?」

「リ、リクさん!」

さゆみは、私の隣で完全にフリーズしてた。



「何してんだ、こんなとこで…」

「え…あ、あの…」

だめだよね?
キースさんとハイキングに行くなんてこと、言っちゃだめだよね?
だったら、何ていえば良い?
さゆみに救いを求めても、さゆみはリクさんをみつめたまま固まっている。



「あ、あの…リ、リクさんこそ、どうして?」

「えっ…お、俺は、その、待ち合わせだ。」

その返事に、さゆみの眉がぴくっと動いた。
わかるよ…さゆみ、その相手が女の人じゃないかって気になったんだよね。
どうしよう…本当にその通りだったら…
さゆみ、絶対落ち込むよね…
そしたら、今日のハイキングはどうなるの??



「あ…おまえ……」

リクさんは、さゆみのことに気付いたみたい。



「は、はい、リクさんの大ファンのさゆみです!
こ、この前のイベントの出待ちで、抱き着いたの、私です!」

わ~…大丈夫かな、そんなこと言って…



「覚えてるよ。
帰り、大丈夫だったか?
あんまりやりすぎると、他のファンにいじめられるぞ。」

「大丈夫です。
私、そんなことくらいでへこみませんから。
それより、この子が…」

「ヅラ子がどうかしたのか?」

「CLOWNのファンの子に…」
「な、なんでもないです!」

私は声を張り上げた。
あんなことくらいで、リクさんに心配かけるのはいやだったから。



「何かあったのか?」

「いえ、さゆみの勘違いです。ね?」

さゆみは渋々頷いた。



「お前たち、今日はライブなのか?」

「いえ、私達は……」

どうしよう?
何て言えば良いんだろう?
ふと時計を見ると、もう9時5分前…
まずいよ!もしも、キースさんが来たら、なんていえば良いの!?
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