愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
「あ…でも、今、他の人達が…」

「いいから、いいから…」

キラさんは私の手を引いて、オルガさん達の所に向かった。



「オルガ!」

「あぁ…」

キラさんはオルガさんに顔を覚えてもらってるらしく、サイン中の顔を上げて小さく笑った。



「この子、璃愛って言って、オルガの大ファンなんだ。
一緒に写真撮ってもらえないかな?」

キラさんの言葉に、私は冷や汗が流れる想いだった。
オルガさんは「望結」っていう本名しか知らないし、オルガさんのファンだなんて言ったこともないのに…っていうか、特にオルガさんのファンってわけじゃないし…



「……そうなの?」

オルガさんは不思議そうな顔をして、私をみつめる。
私は、無理して作り笑いを浮かべた。
今は、笑って誤魔化す以外に手がないから。



「ほら、璃愛…
オルガの横に行って。」

「は、はい。」

オルガさんはサインしたCDを近くにいた女の子に渡して、私の背中に手をまわした。



(うわっ!)



なんか緊張する…



「じゃあ、撮るよ。
はい、チーズ!」

私はさらに無理した笑顔を浮かべ、震える手でピースサインをした。



「あ、ありがとうございました。」

オルガさんに頭を下げ、私はその場から駆け出した。
あぁ、恥ずかしい…
オルガさん、今日のこと、瑠威に話すかな?
口止めした方が良いかな?
いや、それもなんだかおかしいよね。
第一、そんなこと、オルガさんに頼めないよ。
半ばパニックになりながら、私はとりあえずトイレに駆け込んだ。
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