愛しのカレはV(ヴィジュアル)系
乾杯をして、初めてのカシスソーダに口を付けた。
あ…なんだか、飲みやすい…
すっきりしてて、なんだかお酒という感じがしない。



「これ、けっこうイケるね!」

「うん、私もそう思ってたとこ。」

さゆみと内緒話をして、ふと顔を上げたら、隣のテーブルのオルガさんと目が合って、オルガさんは小さく会釈してくれたから、私も慌てて頭を下げた。



「璃愛、良かったじゃん。
オルガ、もうあんたのこと覚えたみたいだね。」

キラさんが私に囁いた。



「そ、そうなのかなぁ?」

私はそう言って愛想笑いを浮かべた。
そうじゃないことはわかってるのに…
オルガさんが私を覚えてくれたのは、ママと瑠威の結婚式やその後の二次会で会ったから。
だけど、そんなことはキラさんには絶対言えない。



「あ…」

オルガさんの様子に今度はクロウさんが気付いて、また私に会釈をしてくれて、さらに、今度はCLOWNのメンバーもそれに気付いたみたいに私の方を見て…



「あれ?……もしかして…ヅラの子?」

リクさんの言葉に私は凍り付いた。



(ヅ…ヅラって……)



「あぁ…さっきは大変やったな。
ヅラ、大丈夫やった?」

キースさんが私の方に振り向いてそんなことを言う。



「は、はい……」

「でも、そうしとったら、ヅラやなんて全然わかれへんわ。
最近のヅラはよう出来てるんやなぁ…」

キースさんはまじまじと私のかつらを見る。



恥ずかしい……
もうかつらのことは言わないで。
他のテーブルの子が私の方を見てくすくす笑ってる。
私はその場から逃げ出すことも出来ず、ただ俯いてじっとしていることしか出来なかった。
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