愛しのカレはV(ヴィジュアル)系




「昨夜は来てくれてありがとな。」

「ううん。ライブ…本当に楽しかった。」

自分の口下手がとても悔しい。
心の中にははちきれそうな程の感情があるのに、『楽しかった』としか表現出来ないんだもん。



ママは帰りが少し遅くなるってことだったから、私は瑠威と居間で寛いでいた。



「そうか、良かった。
俺もすっごく楽しかった。
やっぱ、ライブは最高だな!」

「うん、シュバルツは最高だよね。
でね、昨夜は打ち上げ行って、帰りもみんなとしゃべりながら帰って来たけど、なんかね、いつもよりずっと楽しかったよ。」

しゃべってる間に、思わず顔が綻んでしまう。
まだ、昨夜の余韻が残ってるんだね。



「そっか…じゃあ、これからもずっと来いよ。
あ、昨夜、望結と撮った画像、見せて。」

「え…やだよ。」

「良いじゃん。俺たち親子なんだぜ。
娘と撮った画像を見たがるのは、親として普通のことだろ?」

瑠威がにやけた顔でそんなことを言う。
何が親子よ、いくつも変わらないくせに…



「……そのうち、LINEで送るよ。」

「絶対だぞ!」

「はいはい。あ、でも、万一ファンの子に見られたら困るんじゃないの?」

「見られることなんてないって。」

「わかりましたよ。」



なんだかなぁ…って思うけど…
話があるっていうのはそのことだったのか…と、ちょっとほっとした時、瑠威がさらに話を切り出した。
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